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施工管理技士の第二次検定「安全管理」の経験記述。品質管理・工程管理と並ぶ3大テーマの一つで、建設現場の安全を守る取り組みを問われます。
安全管理の記述で大切なのは「どんな危険があり、その危険に対して具体的にどのような対策を講じたか」を法令知識も交えて書くこと。漠然とした安全意識の話ではなく、具体的な設備・ルール・教育の内容が求められます。
この記事では、安全管理テーマの書き方を、災害種別の例文とともに解説します。
この記事でわかること
安全管理の経験記述とは
試験で求められていること
安全管理テーマでは、実際の工事(または提示された工事概要)において:
- どのような安全上のリスクがあったか(または予測されたか)
- そのリスクに対してどのような対策を検討したか
- 実際に実施した安全管理の手法・設備・教育
- 結果として無災害で工事を完了できたか
を説明することが求められます。
安全管理で書きやすいリスクパターン
| リスクの種類 | 主な原因 | 典型的な対策 |
|---|---|---|
| 墜落・転落 | 高所作業・足場 | 手すり設置・安全帯使用 |
| 重機との接触 | 重機旋回・後退 | 立入禁止区画・誘導員配置 |
| 土砂崩壊・埋没 | 掘削作業 | 法面保護・切梁設置 |
| 飛来・落下 | 高所での資材作業 | 幅木・ネット設置 |
| 感電 | 電気工事・仮設電気 | 絶縁対策・接地 |
| 熱中症 | 夏季の屋外作業 | WBGT管理・休憩確保 |
安全管理の例文(災害種別)
例文1:足場上の高所作業における墜落・転落防止
高所からの墜落・転落は建設業の死亡災害の第1位。試験でも最も頻出のテーマです。
【課題の背景】
本工事(RC造6階建て共同住宅の新築工事)では、建物外壁のタイル張り工事のために高さ21mの外部足場を設置し、5ヶ月間にわたって高所作業を行う必要があった。足場上での作業は常時15〜20名の作業員が従事し、墜落・転落による重篤な労働災害の発生が懸念された。労働安全衛生法では、高さ2m以上の作業場所には墜落防止措置が義務付けられている。
【検討内容】
墜落・転落災害を防止するため、以下の対策を検討した。
- 足場の設備的な墜落防止措置の充実
- 作業員への教育・訓練と毎日の確認体制
【実施した対策】
①足場には高さ90cm以上の手すり、高さ35〜50cmの中さん、高さ10cm以上の幅木(つま先板)を全スパンに設置した。開口部(昇降口を除く)には安全ネット(落下防止ネット)を設置した。また、作業員全員にフルハーネス型安全帯を支給し、胴ベルト型安全帯への変更を禁止した(高さ5m以上の作業についてはフルハーネス型の使用が義務)。
②毎朝の安全朝礼(7時30分)で当日の作業内容と危険箇所を全員に周知した。作業前のKYT(危険予知訓練)では班ごとに危険の洗い出しと対策を検討し、「今日の安全目標」を設定した。足場の点検は職長が毎日実施し、点検記録を作成した。強風(瞬間風速10m/s以上)の際は高所作業を中止するルールを設けた。
【得られた結果】
足場工事開始から竣工まで5ヶ月間、墜落・転落による労働災害ゼロを達成した。足場の点検記録は竣工時まで全て保管し、施主へ提出した。
例文2:重機と作業員の接触事故防止
建設現場での重機(バックホウ・クレーン等)と作業員の接触は重大事故につながります。
【課題の背景】
本工事(道路拡幅工事)では、幅員15mの道路沿いの掘削工事において、バックホウ(0.45m³)2台と多数の作業員(最大40名)が同一エリアで作業する必要があった。重機の旋回範囲に作業員が立ち入ることによる接触事故の発生が最大の懸念事項であった。
【検討内容】
重機と作業員の接触を防止するため、以下の対策を検討した。
- 重機の作業エリアと作業員の作業エリアを物理的に分離する方法
- 視界が確保されない状況での安全確保
【実施した対策】
①重機の旋回範囲を区画ロープと単管バリケードで明確に表示し、作業員が立ち入り禁止エリアに入れないよう物理的に区切った。区画の境界には「立入禁止」の表示と反射板を設置し、夜間も視認できるようにした。
②重機のオペレーター1台につき専任の誘導員1名を配置し、重機の後方・側方確認を誘導員が担当した。バックホウには後付けの後方カメラを設置し、オペレーター自身も死角を確認できるようにした。また、毎朝のTBM(ツールボックスミーティング)で重機の作業範囲を確認し、全員が当日の危険箇所を把握した上で作業を開始するルールとした。
【得られた結果】
工期6ヶ月間を通じて重機と作業員の接触事故ゼロを達成した。定期的な第三者安全パトロール(月1回)でも、重機管理体制について適切と評価された。
例文3:掘削工事における土砂崩壊・埋没防止
【課題の背景】
本工事(建物基礎工事)の掘削作業では、地下2.5mまでの掘削が必要で、掘削幅は最大12m、地山は砂質土(N値8〜15)で地下水位が地表面から2.0mの位置にあった。降雨時には地下水位が上昇し、掘削面の土砂崩壊・作業員の埋没事故が危惧された。また、隣接する既設建物(基礎底面深さ1.8m)への影響も懸念された。
【検討内容】
土砂崩壊を防止するため、以下の対策を検討した。
- 適切な支保工(矢板・切梁)の選定と施工
- 地下水の管理方法
【実施した対策】
①掘削前に鋼矢板(IV型)を深さ4.5m打設し、掘削に伴い切梁(H-200)を深さ1.0mと2.5mの2段に設置した。切梁の設置間隔は3m以下とし、構造計算で安全を確認した。矢板・切梁の変位はレベル計で毎日計測し、設定管理基準値(矢板変位20mm、切梁軸力設計値の80%)を超えた場合は即日作業を中止するルールを設けた。
②地下水処理のためウェルポイントを設置し、地下水位を掘削底面1.5m以下に維持した。降雨時は工事用排水ポンプを稼働させ、掘削底面への湧水を排除した。降雨後24時間は掘削面・法面の目視点検を実施し、異常を確認した場合は作業を中止した。
【得られた結果】
掘削工事全期間を通じて土砂崩壊・地盤沈下の発生なく、安全に基礎工事を完了した。隣接建物への変位(沈下)も管理基準値(5mm)以内に抑えることができた。
安全管理でよく使う専門用語
| 用語 | 意味 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| KYT(危険予知訓練) | 作業前に危険を洗い出す活動 | 「KYTで危険を洗い出した」 |
| TBM | ツールボックスミーティング。作業開始前の短時間の安全確認ミーティング | 「TBMで当日の危険箇所を共有した」 |
| フルハーネス型安全帯 | 体全体を保護する安全帯(2022年から義務化) | 「フルハーネス型安全帯を全員に支給した」 |
| 幅木(つま先板) | 足場の床端部に設置する資材の落下防止板 | 「高さ10cm以上の幅木を設置した」 |
| 切梁 | 土留め支保工の水平部材 | 「H-200の切梁を2段設置した」 |
| 矢板 | 土留め用の板状部材 | 「鋼矢板IV型を打設した」 |
| ウェルポイント | 地下水を強制的に排水する工法 | 「ウェルポイントで地下水位を管理した」 |
| WBGT | 熱中症リスクを示す暑さ指数 | 「WBGTが28℃以上の際は作業を制限した」 |
労働安全衛生法を活用した記述
安全管理の記述に法令の知識を入れると、説得力が格段に上がります。
よく使える法令の知識:
- 「高さ2m以上の作業場所には手すりまたは安全帯使用が義務」
- 「高さ5m以上の作業にはフルハーネス型安全帯の使用が原則義務(2022年〜)」
- 「重機の運転席から5m以内の立入禁止措置が義務」
- 「建設工事の規模(請負額3,000万円以上等)では安全衛生管理体制の構築が義務」
法令を知っているということを示すだけで、専門知識のある受験者と評価されます。
採点で高評価をもらうためのコツ
コツ1:リスクを具体的に書く
「事故が心配だった」では不十分。「高さ21mの足場上での作業員の墜落・転落」や「バックホウの旋回範囲への作業員の立入による接触事故」のように、具体的なリスクを書きましょう。
コツ2:設備的対策と管理的対策の両方を書く
設備(手すり・幅木・ネット)と管理(TBM・巡視・記録)の両方を書くと、体系的な安全管理をしていることが伝わります。
コツ3:数値を盛り込む
「手すりを設置した」より「高さ90cm以上の手すりと高さ35〜50cmの中さんを設置した」のほうが具体的で高評価になります。
コツ4:「労働災害ゼロ」という結果を書く
結果として「〇〇ヶ月間、労働災害ゼロを達成した」と書くことで、対策が有効だったことが伝わります。
まとめ
安全管理テーマの経験記述で合格するための要点をまとめます。
- リスクを具体的に特定する:何の災害が、なぜ発生する恐れがあったかを書く
- 設備的対策と管理的対策の両方:物理的な設備+日常の管理活動
- 数値を入れる:高さ・間隔・人数・頻度など
- 法令知識を活用:労働安全衛生法の要件を記述に盛り込む
- 結果として労働災害ゼロ:対策の効果を明記する
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監修・執筆
sekocan 編集部
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