目次
令和8年度の1級土木施工管理技士試験を受験予定の方へ。
工程管理は、1級土木施工管理技士試験において品質管理・安全管理と並ぶ重要テーマです。第一次検定ではネットワーク工程表の計算問題が頻出であり、第二次検定の経験記述でも出題されます。
この記事では、工程管理の出題傾向と対策、ネットワーク工程表の解き方、経験記述の書き方を詳しく解説します。
この記事でわかること
- 工程管理が試験で重要な理由
- 第一次検定のネットワーク工程表の計算問題対策
- 各種工程表の特徴と使い分け
- 経験記述(工程管理)の書き方と例文
- 工期短縮・工程遅延対策の具体的手法
工程管理が試験で重要な理由
出題頻度が高い
工程管理は、1級土木施工管理技士試験において以下のように出題されます。
| 検定 | 出題形式 | 出題頻度 |
|---|---|---|
| 第一次検定 | 四肢択一(施工管理法) | 毎年出題 |
| 第一次検定 | ネットワーク工程表の計算問題 | ほぼ毎年出題 |
| 第二次検定 | 経験記述 | 約3年に1回(ローテーション) |
| 第二次検定 | 記述問題 | ほぼ毎年出題 |
第二次検定の経験記述では、令和5年度、令和2年度に工程管理が出題されています。令和8年度は工程管理が出題される可能性が高いと予想されます。
実務での重要性
土木工事において工程管理は、工期内に品質を確保しながら工事を完成させるための重要な業務です。
大規模な土木工事(道路、橋梁、トンネル、河川構造物など)は、工期が長く、多くの作業者・機械・材料を調整する必要があります。適切な工程管理がなければ、以下のような問題が発生します。
- 工期遅延による違約金の発生
- 作業員の手待ち時間の増加
- 材料の無駄な在庫
- 関連工事との調整不良
試験では、この実務上の重要性を理解し、適切な工程管理手法を選択できるかが問われます。
第一次検定の工程管理対策
出題分野と傾向
第一次検定の工程管理は、主に施工管理法の分野で出題されます。
頻出テーマ
| テーマ | 出題頻度 | 重要度 |
|---|---|---|
| ネットワーク工程表の計算 | 高 | ★★★ |
| 各種工程表の特徴 | 高 | ★★★ |
| 工程管理の基本概念 | 中 | ★★☆ |
| 工程計画の立案方法 | 中 | ★★☆ |
| 工程の進捗管理 | 中 | ★★☆ |
各種工程表の特徴
工程表にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴があります。
バーチャート(横線式工程表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 作業を横棒で表示、作成が容易 |
| 長所 | わかりやすい、進捗状況を把握しやすい |
| 短所 | 作業間の関連がわかりにくい、クリティカルパスが不明 |
| 用途 | 小規模工事、週間・月間工程の管理 |
ネットワーク工程表(PERT/CPM)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 作業を矢印と結合点で表示 |
| 長所 | 作業間の関連が明確、クリティカルパスがわかる |
| 短所 | 作成に専門知識が必要、複雑な工事では作成が大変 |
| 用途 | 大規模・複雑な工事の工程管理 |
ガントチャート(斜線式工程表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | バーチャートに出来高の斜線を追加 |
| 長所 | 進捗率を視覚的に把握できる |
| 短所 | 作業間の関連がわかりにくい |
| 用途 | 進捗管理、出来高管理 |
出来高累計曲線(Sカーブ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 工事全体の出来高を曲線で表示 |
| 長所 | 全体の進捗状況を一目で把握 |
| 短所 | 個別作業の状況がわからない |
| 用途 | 全体の進捗管理、資金計画 |
ネットワーク工程表の基礎知識
用語の定義
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| アクティビティ(作業) | 矢印で表される各作業 |
| イベント(結合点) | 丸印で表される作業の開始・終了点 |
| ダミー | 作業の順序関係のみを示す点線の矢印(日数は0) |
| クリティカルパス | 最も時間のかかる経路(工期を決定する経路) |
| 最早開始時刻(EST) | その作業を最も早く開始できる時刻 |
| 最遅開始時刻(LST) | 工期に間に合う最も遅い開始時刻 |
| トータルフロート(TF) | 全体に影響を与えない余裕時間 |
| フリーフロート(FF) | 後続作業に影響を与えない余裕時間 |
計算の基本公式
| 項目 | 計算式 |
|---|---|
| 最早完了時刻(EFT) | EST + 所要日数 |
| 最遅開始時刻(LST) | LFT - 所要日数 |
| トータルフロート(TF) | LST - EST または LFT - EFT |
| フリーフロート(FF) | 後続作業のEST - 当該作業のEFT |
ネットワーク工程表の計算問題対策
例題
以下のネットワーク工程表について、各問いに答えなさい。
作業A(5日) 作業C(4日)
1 ─────────→ 2 ─────────→ 4
│ │ │
│作業B(3日) │ダミー │作業E(6日)
↓ ↓ ↓
3 ─────────→ 4 ─────────→ 5
作業D(7日)
※実際の試験では図が示されます
解き方の手順
ステップ1:前進計算(最早開始・完了時刻の計算)
スタートから順に、最早開始時刻(EST)と最早完了時刻(EFT)を計算します。
| イベント | EST | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 0 | スタート |
| 2 | 5 | 0 + 作業A(5日) |
| 3 | 3 | 0 + 作業B(3日) |
| 4 | 10 | max(5+4, 3+7) = max(9, 10) = 10 |
| 5 | 16 | 10 + 作業E(6日) |
工期 = 16日
ステップ2:後退計算(最遅開始・完了時刻の計算)
ゴールから逆に、最遅完了時刻(LFT)と最遅開始時刻(LST)を計算します。
| イベント | LFT | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 5 | 16 | 工期(ゴール) |
| 4 | 10 | 16 - 作業E(6日) |
| 3 | 3 | 10 - 作業D(7日) |
| 2 | 6 | 10 - 作業C(4日) |
| 1 | 0 | min(6-5, 3-3) = min(1, 0) = 0 |
ステップ3:フロートの計算
各作業のトータルフロート(TF)を計算します。
| 作業 | EST | EFT | LST | LFT | TF |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 0 | 5 | 1 | 6 | 1 |
| B | 0 | 3 | 0 | 3 | 0 |
| C | 5 | 9 | 6 | 10 | 1 |
| D | 3 | 10 | 3 | 10 | 0 |
| E | 10 | 16 | 10 | 16 | 0 |
クリティカルパス = TFが0の経路 = B → D → E
よくある出題パターン
-
工期を求める問題
- 前進計算でゴールの最早完了時刻を求める
-
クリティカルパスを求める問題
- TF=0の作業を結んだ経路を特定
-
フロートを求める問題
- 特定の作業のTFまたはFFを計算
-
工期短縮に関する問題
- クリティカルパス上の作業を短縮すると工期が短縮される
- クリティカルパス以外の作業を短縮しても工期は変わらない
-
作業の遅延に関する問題
- TF以内の遅延は工期に影響しない
- TFを超える遅延は工期に影響する
計算問題のポイント
間違いやすい点
-
合流点での最早時刻の計算
- 複数の作業が合流する点では、最大値を採用
- 例:作業Aが5日、作業Bが7日で合流 → 合流点のEST = 7日
-
分岐点での最遅時刻の計算
- 複数の作業に分岐する点では、最小値を採用
- 例:作業CのLST = 10日、作業DのLST = 8日 → 分岐点のLFT = 8日
-
ダミーの扱い
- ダミーは所要日数0の作業として計算
- 順序関係を示すだけなので、ダミー自体にフロートはない
計算問題の攻略法
-
図に数値を書き込む
- イベント番号の上にEST、下にLFTを記入
- 見やすく整理することでミスを防ぐ
-
検算をする
- クリティカルパス上の作業時間の合計 = 工期 であることを確認
- TF = LST - EST = LFT - EFT の両方で確認
-
時間を意識する
- 計算問題に時間をかけすぎない
- 基本的な問題は5分以内で解けるように練習
第二次検定の工程管理対策
経験記述の出題形式
第二次検定の経験記述で工程管理が出題される場合、以下のような形式になります。
問題文の例
あなたが経験した土木工事において、工程管理に関して工夫した内容について、
以下の項目ごとに具体的に記述しなさい。
(1) 工事概要
(2) 工程管理上の課題とその理由
(3) 課題に対して実施した具体的な対策
(4) 対策の結果と得られた効果
経験記述のテーマ選定
工程管理の経験記述では、以下のようなテーマが適しています。
適したテーマ
| テーマ | 内容例 |
|---|---|
| 工期短縮 | 施工方法の変更、作業の並行化 |
| 工程遅延対策 | 天候不良、資材遅延への対応 |
| 工程の最適化 | クリティカルパスの管理、山積み山崩し |
| 関連工事との調整 | 他工事との工程調整、交通規制との調整 |
| 資源(人・機械)の最適配置 | 作業員の効率的配置、機械の稼働率向上 |
避けるべきテーマ
- 「予定通り工事が完了した」(工夫がない)
- 品質管理や安全管理の話が中心になっている
- 具体的な工程管理手法が示されていない
経験記述の例文(橋梁工事の場合)
工事概要
当該工事は、〇〇県発注の〇〇川橋梁上部工工事であり、橋長L=120m(3径間連続鋼桁橋)の架設工事である。主な工種は、鋼桁製作・架設工、床版工、橋面工であり、私は主任技術者として工程管理を担当した。工期は令和〇年4月から令和〇年3月までの12ヶ月間であった。
工程管理上の課題とその理由
本工事で工程管理上の課題となったのは、河川内での架設作業の工程確保であった。
課題となった理由は以下の3点である。
- 河川管理者との協議により、河川内作業は**非出水期(10月〜5月)**に限定された。
- 架設に使用するベント設備の設置・撤去に各1ヶ月を要し、実質的な架設期間は約5ヶ月に限られた。
- 当初計画では架設期間が5.5ヶ月必要であり、非出水期内に完了できない可能性があった。
実施した具体的な対策
上記の課題に対して、以下の対策を実施した。
-
架設工法の変更
- 当初計画のクレーンベント工法から、トラッククレーン架設工法に変更
- ベント設備の設置期間を1ヶ月から2週間に短縮
- 発注者と協議し、設計変更を行った
-
作業の並行化
- 鋼桁の地組作業と架設準備作業を並行して実施
- ネットワーク工程表を作成し、クリティカルパスを明確化
- クリティカルパス上の作業に重点的に資源を配分
-
夜間作業の導入
- 河川占用条件を確認し、夜間作業の許可を取得
- 架設作業の一部を夜間に実施し、1日あたりの作業量を増加
- 作業員の交代制を導入し、安全を確保
-
週間工程会議の実施
- 毎週月曜日に工程会議を開催し、進捗状況を確認
- 遅延の兆候があれば、即座に対策を検討・実施
- 天候予報を確認し、作業スケジュールを柔軟に調整
対策の結果と得られた効果
上記の対策を実施した結果、以下の効果が得られた。
- 架設工法の変更により、非出水期内での架設作業が可能となった。
- 作業の並行化と夜間作業の導入により、当初計画から約1ヶ月の工期短縮を達成した。
- 最終的に工期内に工事を完了し、発注者検査においても工程管理状況が高く評価された。
- 週間工程会議の実施により、問題の早期発見・早期対応が可能となり、大きな工程遅延を防止できた。
経験記述のポイント
高得点を取るコツ
-
具体的な数値を入れる
- 「工期を短縮した」→「当初計画から1ヶ月の工期短縮を達成」
- 「作業期間が限られた」→「非出水期の5ヶ月間に限定」
-
土木工事特有の工程管理手法を示す
- ネットワーク工程表、クリティカルパス、山積み山崩し
- 関連工事との調整、河川占用条件、交通規制
-
課題と対策の論理的なつながり
- 「非出水期内に完了できない」→「架設工法を変更して期間短縮」
- 課題に対する対策が明確に対応していること
-
結果を定量的に示す
- 「予定通り完了した」→「当初計画から1ヶ月短縮して完了」
- 数値で結果を示すことで説得力が増す
工程管理の具体的手法
工程計画の立案
工程計画の手順
-
作業の洗い出し
- WBS(Work Breakdown Structure)で作業を分解
- 主要工種、細別工種、単位作業に分類
-
作業順序の決定
- 先行作業、後続作業の関係を明確化
- 技術的な制約、資源の制約を考慮
-
所要日数の算定
- 施工数量 ÷ 日施工量 = 所要日数
- 作業員数、機械能力、天候を考慮
-
工程表の作成
- バーチャートまたはネットワーク工程表を作成
- クリティカルパスを確認
-
工程の調整
- 山積み山崩しで資源を平準化
- 工期に収まるように調整
山積み・山崩し
大規模な土木工事では、作業員や機械の山積み山崩しが重要です。
山積み図の作成
各作業の必要資源(作業員数、機械台数)を縦軸に、時間を横軸にとった図を作成します。
山崩しの方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 作業開始時期の調整 | フロートがある作業を後ろにずらす |
| 作業時間の延長 | 投入資源を減らして日数を延ばす |
| 作業の分割 | 1つの作業を2つ以上に分割 |
| 外注の活用 | 一時的にピークになる作業を外注 |
工期短縮の手法
土木工事で工期短縮が必要になった場合の具体的手法です。
| 手法 | 内容 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| クラッシング | クリティカルパス上の作業に資源を追加投入 | 工期短縮 | コスト増加 |
| ファーストトラッキング | 作業の並行化(本来は順序のある作業を一部並行) | 工期短縮 | リスク増加 |
| 施工方法の変更 | より効率的な工法への変更 | 工期短縮 | 設計変更が必要な場合あり |
| 作業時間の延長 | 夜間作業、休日作業 | 工期短縮 | 労務費増加、安全確保 |
| プレハブ化 | 現場作業を工場製作に置き換え | 工期短縮、品質向上 | 運搬の制約 |
土木工事での工期短縮例
| 工事種類 | 工期短縮手法 |
|---|---|
| 橋梁工事 | トラッククレーン架設への変更、プレキャスト部材の採用 |
| トンネル工事 | NATM工法の最適化、急速施工(24時間体制) |
| 道路工事 | 機械施工の大型化、複数班編成 |
| 河川工事 | 仮設計画の最適化、大型土のうの採用 |
工程遅延への対応
土木工事で工程遅延が発生した場合の対応方法です。
遅延原因の分析
| 原因 | 対応方法 |
|---|---|
| 天候不良(降雨、降雪) | 予備日の確保、晴天時の作業効率向上 |
| 資材の遅延 | 発注時期の前倒し、代替品の検討 |
| 設計変更 | 発注者との早期協議、工期延長の交渉 |
| 地盤条件の変化 | 追加調査、施工方法の変更 |
| 関連工事の遅延 | 工程調整会議、作業順序の変更 |
挽回策の検討
-
クリティカルパスの確認
- 遅延した作業がクリティカルパス上かどうか
- クリティカルパス上なら即座に対策が必要
-
フロートの活用
- 後続作業にフロートがあれば、そこで吸収
- フロートがない場合は挽回策が必要
-
挽回策の実施
- 作業員・機械の増員
- 作業時間の延長
- 施工方法の変更
まとめ
1級土木施工管理技士試験の工程管理について解説しました。
ポイントをまとめると
- 工程管理は第一次・第二次検定ともに頻出テーマ
- 第一次検定ではネットワーク工程表の計算問題が重要
- クリティカルパスとフロートの計算は必ずマスター
- 経験記述では令和5年度に出題、令和8年度も出題の可能性が高い
- 経験記述は具体的な数値と工程管理手法を含めて記述
- 工期短縮・工程遅延対策の具体的手法を押さえる
工程管理は、試験対策としてだけでなく、実務でも施工管理技士の最も重要な業務の一つです。
試験勉強を通じて、実務に活かせる工程管理の知識を身につけましょう。
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監修・執筆
sekocan 編集部
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