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「工程管理の経験記述、どんな事例を書けばいいの?」
1級建築施工管理技士の第二次検定において、工程管理は品質管理と並ぶ重要な出題テーマです。
工程管理とは、工事を所定の工期内に完成させるための計画・管理活動です。試験では、あなたが経験した工事において、工程上の課題をどのように特定し、どのような対策で工期を遵守したかを具体的に記述することが求められます。
この記事では、令和8年度の試験に向けて、工程管理の経験記述の書き方、工種別の例文、高得点を取るためのテクニックを詳しく解説します。
この記事でわかること
工程管理の経験記述で求められること
工程管理とは
工程管理(Schedule Management)とは、工事を契約工期内に完成させるために、作業の順序・期間・資源配分を計画し、進捗を管理する活動です。
建築工事における工程管理の主な内容は以下の通りです。
| 管理項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 工程計画 | 全体工程表、月間工程表、週間工程表の作成 |
| 進捗管理 | 実績と計画の比較、遅延の早期発見 |
| 資源管理 | 人員配置、機械・資材の手配 |
| 調整業務 | 関係者間の調整、工程会議の開催 |
| 遅延対策 | 挽回策の立案・実施 |
工程管理で出題されるテーマ
第二次検定で出題される工程管理のテーマは、主に以下のパターンに分類されます。
1. 工程遅延への対策
- 悪天候・資材遅延などによる遅れへの対応
- クリティカルパスの遅延対策
2. 工期短縮の取り組み
- 施工方法の工夫による工期短縮
- 作業の並行化・省力化
3. 工程の最適化
- 工程表の作成・見直し
- フロートの活用
令和8年度の出題形式(予想)
令和6年度からの新形式では、提示された工事概要に対して工程管理上の課題と対策を記述します。令和8年度もこの形式が継続されると予想されます。
出題の流れ:
- 複数の工事概要(新築・解体・改修)から1つを選択
- 選択した工事に対する工程管理上の課題を特定
- 課題に対する検討内容と実施した対策を記述
- 得られた結果を記述
工程管理の基礎知識
主な工程表の種類
工程管理で使用する主な工程表を理解しておきましょう。
| 工程表の種類 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| バーチャート(横線式) | 作業の開始・終了が一目でわかる | 全体工程の把握、施主への説明 |
| ネットワーク工程表 | 作業の相互関係が明確 | クリティカルパスの把握、遅延対策 |
| マイルストーン工程表 | 重要な節目を明示 | 進捗報告、工程会議 |
| 出来高曲線(Sカーブ) | 進捗率の推移を可視化 | 全体進捗の管理 |
クリティカルパスとは
クリティカルパス(Critical Path)とは、工程全体の中で最も長い経路であり、この経路上の作業が遅れると工期全体に影響します。
クリティカルパスの特徴:
- フロート(余裕日数)がゼロ
- この経路の遅延は工期遅延に直結
- 工程管理の最重要ポイント
工程管理の経験記述では、クリティカルパスを意識した記述が高評価につながります。
フロートの活用
フロート(Float)とは、作業に許容される余裕日数のことです。
| フロートの種類 | 定義 |
|---|---|
| トータルフロート | 全体工期に影響を与えない範囲での余裕 |
| フリーフロート | 後続作業に影響を与えない範囲での余裕 |
フロートを活用した工程調整は、経験記述でアピールできるポイントです。
工程管理の例文集【テーマ別】
例文1:悪天候による工程遅延対策
想定される工事概要:RC造8階建て分譲マンション、延床面積5,000平方メートル、工期18ヶ月
課題の背景
分譲マンションの躯体工事中、8月の台風シーズンに連続した悪天候に見舞われ、外部足場での作業が合計10日間停止した。このままでは型枠工事が遅延し、全体工期に影響するおそれがあった。
検討内容
工程遅延への対策について、以下の点を検討した。
- クリティカルパス上の作業の特定と影響度分析
- 遅延を挽回するための施工方法の見直し
- 作業員・資機材の増強計画
実施した対策
ネットワーク工程表を用いてクリティカルパスを再分析したところ、4階〜6階の型枠・配筋・コンクリート工事がクリティカルパス上にあることを確認した。遅延日数10日を挽回するため、以下の対策を実施した。
第一に、型枠工事の作業班を2班から3班に増強し、1フロアの施工日数を5日から4日に短縮した。増員に必要な型枠大工8名は、協力会社と協議の上、他現場からの応援で確保した。
第二に、コンクリート打設を土曜日にも実施することとし、ポンプ車・生コン車の手配を土曜日分も確保した。土曜打設により、従来6日サイクルを5日サイクルに短縮した。
第三に、養生期間を短縮するため、早強ポルトランドセメントを使用し、型枠存置期間を7日から5日に短縮した。強度確認は圧縮強度試験で5N/mm2以上を確認してから脱型した。
得られた結果
これらの対策により、4階〜6階の躯体工事で合計12日間の工程短縮を達成した。最終的に、遅延を完全に解消し、当初予定通りの工期(18ヶ月)で竣工することができた。
例文2:資材納入遅延への対策
想定される工事概要:S造2階建て店舗、延床面積1,500平方メートル、工期6ヶ月
課題の背景
鉄骨造店舗の建方工事において、鉄骨製作工場の工程遅延により、鉄骨の納入が当初計画より2週間遅れることが判明した。鉄骨建方はクリティカルパス上にあり、このままでは工期に影響するおそれがあった。
検討内容
資材納入遅延への対策について、以下の点を検討した。
- 鉄骨納入までの期間で実施できる先行作業の洗い出し
- 鉄骨建方後の作業短縮策
- 鉄骨製作工場との納期調整
実施した対策
第一に、鉄骨納入を待つ間に先行して実施できる作業を洗い出し、工程を組み替えた。具体的には、外構工事の一部(駐車場舗装下地工事)、設備配管の先行埋設、電気配管のスラブ配管を先行実施した。これにより、フロートのあった作業を前倒しで消化した。
第二に、鉄骨製作工場と協議し、納入を2回に分割してもらった。柱・大梁を第1便(当初予定の1週間遅れ)、小梁・ブレースを第2便(当初予定の2週間遅れ)として納入することで、柱・大梁の建方を1週間前倒しで開始できるようにした。
第三に、鉄骨建方後のデッキプレート敷き込み・配筋・コンクリート打設を、建方と並行して実施した。4分割した施工区画のうち、建方完了区画から順次次工程に着手し、待ち時間を最小化した。
得られた結果
これらの対策により、鉄骨納入遅延の影響を最小限に抑え、工期遅延は5日間に留めることができた。施主と協議の上、竣工日を5日延長したが、店舗オープンには影響せず、顧客満足を得て竣工した。
例文3:工期短縮の取り組み(PCa工法の採用)
想定される工事概要:RC造5階建て事務所ビル、延床面積3,000平方メートル、短工期(12ヶ月)
課題の背景
事務所ビルの新築工事において、施主から当初計画より2ヶ月短い12ヶ月での竣工を求められた。従来の在来工法では工期達成が困難であり、工期短縮のための施工方法の見直しが必要であった。
検討内容
工期短縮について、以下の点を検討した。
- 躯体工事の工法変更による短縮策
- 仕上げ工事との並行作業の可能性
- 工期短縮に伴うコストへの影響
実施した対策
第一に、床スラブにプレキャストコンクリート(PCa)合成床版を採用した。在来のデッキプレート+現場打ちコンクリートに比べ、配筋作業が不要となり、1フロアあたり2日間の工期短縮を実現した。5フロア合計で10日間の短縮効果を得た。
第二に、外壁にALC版を採用し、躯体工事と並行して外壁施工を進めた。躯体が3階まで立ち上がった時点で1階の外壁施工を開始し、躯体進捗に合わせて追いかけ施工とした。これにより、従来は躯体完了後に開始していた外壁工事を約1ヶ月前倒しした。
第三に、内装工事は乾式工法を採用し、左官工事を極力削減した。軽量鉄骨下地+石膏ボード張りを標準とし、湿式工法による乾燥待ち時間を排除した。これにより、内装工事を2週間短縮した。
得られた結果
これらの工期短縮策により、合計で約2.5ヶ月の工期短縮を達成した。追加コストは約5%増加したが、施主の要望である12ヶ月での竣工を実現し、高い評価を得た。
例文4:複数工区の同時進行管理
想定される工事概要:RC造10階建て分譲マンション2棟、延床面積各6,000平方メートル、同時施工
課題の背景
分譲マンション2棟の同時施工において、タワークレーン1基で2棟の揚重作業を行う必要があった。クレーンの使用調整が工程管理上の重要課題であり、効率的な作業計画の立案が求められた。
検討内容
複数工区の工程管理について、以下の点を検討した。
- タワークレーンの効率的な使用計画
- 2棟間の工程調整方法
- 資材搬入・揚重の優先順位付け
実施した対策
第一に、2棟の躯体工事の進捗を意図的に2週間ずらす計画とした。A棟が型枠工事の時、B棟はコンクリート養生期間となるよう調整し、クレーン使用の競合を回避した。
第二に、クレーン使用の優先順位を明確化し、日程表に「A棟優先日」「B棟優先日」を設定した。優先日には、その棟の重量物揚重(型枠パネル、鉄筋、コンクリートポンプ等)を集中して行った。
第三に、毎週月曜日に両棟合同の工程会議を開催し、翌週のクレーン使用予定を調整した。会議にはA棟・B棟の職長、クレーンオペレーター、工事主任が参加し、使用時間帯を30分単位で確定した。
得られた結果
工程調整の結果、クレーン使用の競合による待ち時間は1日平均30分以内に抑えることができた。2棟とも当初計画通りの20ヶ月で竣工し、同時引渡しを実現した。
例文5:改修工事の工程管理(居ながら改修)
想定される工事概要:RC造6階建て事務所ビル改修、延床面積4,000平方メートル、居ながら改修
課題の背景
事務所ビルの内装改修工事において、テナントの営業を継続しながら施工する居ながら改修が求められた。テナントごとに改修時期を調整する必要があり、複雑な工程管理が課題であった。
検討内容
居ながら改修の工程管理について、以下の点を検討した。
- テナント移転スケジュールとの整合
- 騒音・振動作業の時間帯制限への対応
- 各テナントの改修順序と全体工期の最適化
実施した対策
第一に、各テナントの仮移転日程を2ヶ月前に確定し、それに基づいて詳細工程表を作成した。工程表はマイルストーン方式とし、「テナントA退去」「テナントA改修完了」「テナントA入居」の各節目を明示した。
第二に、騒音・振動を伴う作業(はつり、コア抜き等)は、営業時間外(19時〜7時)に限定した。夜間作業の増員費用は見積段階で計上し、施主の了承を得た。日中作業は、塗装・クロス張り等の静粛な作業に限定した。
第三に、改修順序は上階から下階へと進め、天井内配管工事の影響が下階に及ばないよう配慮した。各階の改修期間は4週間とし、1週目:解体、2週目:設備配管、3週目:内装下地、4週目:仕上げの標準工程を設定した。
得られた結果
複雑な居ながら改修工事を、テナントからの苦情なく、予定工期の8ヶ月で完了した。各テナントの営業日数への影響は最小限に抑え、ビルオーナーから高い評価を得た。
例文6:工程遅延を未然に防ぐ管理
想定される工事概要:RC造12階建てホテル、延床面積8,000平方メートル
課題の背景
ホテル新築工事において、開業日が厳守事項であり、工程遅延は絶対に許されない状況であった。施工開始前から、工程遅延を未然に防ぐ管理体制の構築が重要な課題であった。
検討内容
工程遅延の未然防止について、以下の点を検討した。
- 早期警報システムの構築
- 予備日(バッファ)の設定方法
- 週次での進捗管理方法
実施した対策
第一に、ネットワーク工程表のクリティカルパス上の各作業に「警戒ライン」を設定した。計画進捗の90%を下回った時点で「黄信号」、80%を下回った時点で「赤信号」とし、それぞれ対策会議を開催するルールを定めた。
第二に、全体工程の末尾に2週間の予備日(バッファ)を設定した。ただし、予備日は安易に使用せず、使用する場合は所長決裁を必要とするルールとした。また、各フロアの施工完了〜検査の間にも3日間のフリーフロートを設定した。
第三に、毎週金曜日に全協力会社参加の工程会議を開催し、翌週の詳細工程を確定した。会議では、各業者の作業予定を日単位で確認し、取り合い部分の調整を行った。進捗が遅れている場合は、その場で挽回策を決定した。
得られた結果
早期警報システムにより、3回の「黄信号」を検出し、いずれも早期対策で挽回した。「赤信号」に至るケースはなく、予備日も使用せずに予定通り24ヶ月で竣工した。開業日を厳守し、施主から感謝状を受領した。
高得点を取るための5つのポイント
ポイント1:具体的な日数・数値を入れる
工程管理では、日数の定量的な表現が必須です。
| 項目 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|
| 遅延日数 | 大幅に遅延した | 10日間遅延した |
| 短縮日数 | 工期を短縮した | 12日間短縮した |
| 作業人数 | 増員した | 8名から12名に増員した |
| サイクル | サイクルを短縮 | 6日サイクルを5日サイクルに |
ポイント2:工程管理手法を明記する
使用した工程管理手法を具体的に記述します。
記述すべき手法の例:
- ネットワーク工程表によるクリティカルパス分析
- バーチャートによる進捗管理
- 出来高曲線(Sカーブ)による全体進捗確認
- フロートの活用による工程調整
- マイルストーン管理による節目管理
ポイント3:原因→対策→結果の流れを明確に
工程管理の記述では、論理的な流れが重要です。
基本構成:
【原因】〇〇により、△日間の遅延が発生した。
【検討】クリティカルパスを分析し、□□が重要であることを確認した。
【対策】遅延を挽回するため、◇◇を実施した。
【結果】これにより、遅延を解消し、予定通り竣工した。
ポイント4:クリティカルパスを意識した記述
工程管理では、クリティカルパスへの言及が高評価につながります。
クリティカルパスに関する記述例:
- 「ネットワーク工程表でクリティカルパスを分析し、躯体工事が律速であることを確認した」
- 「クリティカルパス上の型枠工事を重点管理し、遅延を防止した」
- 「フロートのある外構工事を先行実施し、クリティカルパスへの影響を回避した」
ポイント5:関係者との調整を記述
工程管理には関係者間の調整が不可欠です。これを記述することで、管理能力をアピールできます。
調整に関する記述例:
- 協力会社との増員交渉
- 資材メーカーとの納期調整
- 施主への工程報告・協議
- 工程会議の開催・運営
よくある減点パターンと対策
減点1:工程管理と施工管理の混同
NG例:「品質検査で不合格となり、手直しを行った」(これは品質管理)
対策:工程管理は「工期・日数・進捗」に焦点を当て、品質や安全の話題は最小限にする
減点2:数値が曖昧
NG例:「大幅に遅延した」「かなり短縮できた」
対策:必ず具体的な日数を記述する(「10日間遅延」「2週間短縮」など)
減点3:対策が非現実的
NG例:「作業員を3倍に増員して挽回した」
対策:技術的・経済的に妥当な対策を記述する
減点4:結果が曖昧
NG例:「工期を守ることができた」
対策:「予定通り18ヶ月で竣工した」「5日間の遅延に抑えた」など具体的に記述
減点5:工程管理手法への言及がない
NG例:手法名を一切記述せず、対策のみを列挙
対策:「ネットワーク工程表」「クリティカルパス」「フロート」などの用語を適切に使用する
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まとめ
令和8年度の1級建築施工管理技士 第二次検定でも、工程管理テーマの出題が継続されると予想されます。
工程管理テーマで高得点を取るためのポイントをまとめます。
記述の主なテーマ:
- 工程遅延対策:悪天候・資材遅延等への対応
- 工期短縮:施工方法の工夫、作業の並行化
- 工程最適化:フロートの活用、複数工区の調整
高得点を取るコツ:
- 具体的な日数・数値を必ず入れる
- 工程管理手法(ネットワーク工程表等)を明記する
- 原因→対策→結果の流れを明確にする
- クリティカルパスを意識した記述をする
- 関係者との調整を記述する
避けるべき減点パターン:
- 工程管理と他のテーマの混同
- 数値の曖昧な記述
- 非現実的な対策
- 結果の曖昧な記述
- 工程管理手法への言及の欠如
この記事で紹介した例文を参考に、自分の経験に基づいたパターンを複数用意しておきましょう。過去問演習と合わせて、着実に対策を進めてください。
工程管理の専門用語は用語集でも確認できます。
令和8年度の合格を目指して、一緒に頑張りましょう。
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監修・執筆
sekocan 編集部
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