目次
令和8年度の1級建築施工管理技士 第二次検定を目指す方へ。
「経験記述は何を書けばいいかわからない」「新形式になって対策方法が変わった?」という不安を抱えていませんか?
実は、令和6年度から経験記述の試験形式が大きく変更されました。令和8年度もこの新形式が継続されると予想されます。従来は自分自身が経験した工事について記述する形式でしたが、新形式では試験で提示された工事概要に基づいて解答する方式に変わりました。
この記事では、新形式に対応した経験記述の書き方と、品質管理・工程管理・安全管理のテーマ別例文を詳しく解説します。
この記事でわかること
- 令和6年度からの経験記述の変更点
- 新形式の経験記述で求められる力
- 品質管理・工程管理・安全管理のテーマ別例文
- 高得点を取るための書き方のコツ
1級建築施工管理技士 経験記述の新形式を解説【令和8年度対応】
旧形式と新形式の違い
令和6年度(2024年)から経験記述の出題形式が大きく変更されました。令和8年度もこの新形式で実施されると予想されます。
| 項目 | 旧形式(〜令和5年度) | 新形式(令和6年度〜) |
|---|---|---|
| 工事概要 | 受験者自身の経験を記述 | 試験問題で提示される |
| 記述内容 | 自分の経験に基づく課題・対策 | 提示された工事に対する課題・対策 |
| 求められる力 | 経験の言語化能力 | 知識の応用力・柔軟な思考力 |
| 丸暗記での対応 | 可能だった | 困難になった |
なぜ試験形式が変わったのか
試験実施機関である建設業振興基金は、変更の理由として「模範解答例の暗記等ではなく、自身の経験に基づかなければ解答できないような設問への見直し」を挙げています。
これは、過去に不正受検が問題となったことを受けての対策でもあります。丸暗記では通用しない、真の実力を測る試験へと進化しました。
しかし裏を返せば、しっかりとした知識と応用力を身につければ、現場経験が浅くても合格できるということです。
新形式で提示される工事概要の内容
新形式では、試験問題で以下のような工事概要が提示されます。
- 工事名称・工事場所
- 建物用途(事務所ビル、共同住宅、商業施設など)
- 構造・規模(RC造、SRC造、S造、階数、延床面積)
- 工期と施工時期
- 外部仕上げ・内部仕上げ
- 敷地条件(用途地域、隣接道路、周辺環境)
この提示された情報から、課題を抽出し、対策を記述することが求められます。
令和6年度の出題傾向
令和6年度の第二次検定では、経験記述に加えて「建設業の長時間労働の原因と対策」についても出題されました。これは働き方改革への対応を反映した出題です。
今後も社会的なテーマ(働き方改革、DX化、環境配慮など)が出題される可能性があるため、幅広い視野での対策が必要です。
経験記述の書き方|基本構成と5つのコツ
経験記述の基本構成
経験記述は、以下の4つの要素で構成すると論理的にまとまります。
- 課題の背景:なぜその課題が発生するのか
- 検討内容:どのような対策を検討したか
- 実施した対策:具体的に何を行ったか
- 得られた結果:対策によりどうなったか
この構成を意識することで、採点者に伝わりやすい記述になります。
高得点を取るための5つのコツ
コツ1:テーマとの一貫性を保つ
品質管理がテーマなのに安全対策の話になってしまうと、大幅な減点対象です。記述する前に「このテーマで何を書くべきか」を明確にしましょう。
品質管理のテーマで書くべき内容
- 材料の品質確保
- 施工精度の管理
- 仕上がり品質の向上
- 検査・試験方法
工程管理のテーマで書くべき内容
- 工期遵守の取り組み
- 作業効率の向上
- 遅延防止策
- 工程調整
安全管理のテーマで書くべき内容
- 危険作業への対策
- 作業員の安全確保
- 第三者への安全配慮
- 安全教育・パトロール
コツ2:具体的な数値を盛り込む
説得力のある記述には、具体的な数値が不可欠です。
悪い例:「コンクリートの品質管理を徹底した」
良い例:「外気温が5℃以下となる冬季施工のため、コンクリートの練り混ぜ温度を10〜20℃に管理し、打設後は養生シートで覆い、ジェットヒーターで5日間、10℃以上を保つ加温養生を行った」
数値を入れることで、実務能力の高さをアピールできます。
コツ3:因果関係を明確にする
「〜のため、〜を行い、〜を防止(確保)した」という流れで記述すると、論理的な文章になります。
例:「狭小地での作業となるため、鉄骨部材のジャストインタイム搬入を行い、仮置きスペースを確保した」
コツ4:専門用語を正しく使う
施工管理の専門用語を正しく使うことで、知識の深さをアピールできます。
よく使う専門用語
- 養生(ようじょう):施工後のコンクリートや仕上げ材を保護すること
- 打設(だせつ):コンクリートを型枠に流し込むこと
- かぶり厚さ:鉄筋からコンクリート表面までの距離
- 根切り(ねぎり):基礎を造るために地盤を掘削すること
- 山留め(やまどめ):掘削時に土砂の崩壊を防ぐ仮設構造物
コツ5:工事概要との整合性を確認
新形式では、提示された工事概要との整合性が重要です。RC造の工事なのに木造の施工方法を記述すると減点対象です。
確認すべきポイント
- 構造種別(RC造、S造、SRC造など)
- 建物規模(高層・中層・低層)
- 用途(事務所、住宅、商業施設など)
- 施工時期(夏季・冬季・梅雨期など)
- 敷地条件(市街地・郊外など)
テーマ別 経験記述の例文集
品質管理の例文
例文1:夏季のコンクリート打設における品質管理
課題の背景
RC造10階建て事務所ビルの新築工事において、8月の夏季にコンクリート打設を行う計画であった。外気温が35℃を超える猛暑日が続くことが予想され、コンクリートの温度上昇によるひび割れ発生や、急激な水分蒸発による表面劣化を課題とした。
検討内容
コンクリートの品質確保のため、以下の3点について検討した。
- 練り混ぜから打設完了までの温度管理
- 打設後の養生方法
- 打設時間帯の調整
実施した対策
生コン工場に練り上がり温度を35℃以下とするよう指示し、運搬時間を90分以内に管理した。また、打設は気温の低い早朝6時から開始し、14時までに完了させる計画とした。打設後は直射日光を避けるため遮光シートで覆い、散水養生を7日間継続して実施した。
得られた結果
これらの対策により、コンクリートの温度ひび割れや表面劣化を防止し、圧縮強度試験で設計基準強度27N/mm²に対し、35N/mm²を確保することができた。
例文2:外壁タイル張りの品質管理
課題の背景
SRC造15階建て共同住宅の新築工事において、外壁に45二丁掛タイルを張り付ける計画であった。高層建物のため、タイルの剥落は重大な事故につながることから、接着強度の確保を課題とした。
検討内容
タイルの接着強度を確保するため、以下の3点について検討した。
- 下地モルタルの品質管理
- 張り付けモルタルの配合と塗り厚
- 接着強度の確認試験
実施した対策
下地モルタルは14日間以上の養生期間を確保し、含水率を8%以下に管理した。張り付けモルタルはセメント1:砂2.5の配合とし、塗り厚を4〜6mmに管理した。張り付け後は各階で引張接着強度試験を実施し、0.4N/mm²以上であることを確認した。
得られた結果
全ての試験で引張接着強度0.6N/mm²以上を確保し、竣工後5年経過した現在もタイルの浮きや剥落は発生していない。
工程管理の例文
例文1:梅雨期の躯体工事における工程管理
課題の背景
RC造8階建て共同住宅の新築工事において、6月〜7月の梅雨期に躯体工事を行う計画であった。降雨による作業中止が予想され、予定工期12ヶ月での完了を課題とした。
検討内容
工期遵守のため、以下の3点について検討した。
- 降雨時でも可能な作業の洗い出し
- 晴天日の作業効率向上策
- 全体工程のバッファ(余裕)確保
実施した対策
降雨時には型枠内部での配筋作業や、屋内での墨出し作業を行う計画とした。晴天日は作業員を増員し、1日2スパンのコンクリート打設を実施した。また、週間天気予報を確認し、3日以上の連続晴天が見込める場合は休日出勤も含めた突貫工程を編成した。
得られた結果
梅雨期間中に計15日の降雨日があったが、降雨時作業の実施と晴天日の増員により、躯体工事を予定通り8月末に完了することができた。
例文2:他業種との輻輳工事における工程管理
課題の背景
RC造5階建て商業施設の新築工事において、電気・設備工事と建築仕上げ工事が同時期に施工される輻輳状態となった。各業種の作業エリアの干渉により、工程の遅延を課題とした。
検討内容
輻輳による遅延を防ぐため、以下の3点について検討した。
- 各業種の作業エリアの明確化
- 工程調整会議の開催頻度
- 手待ち時間の削減策
実施した対策
週1回の工程会議に加え、毎朝15分間の作業前ミーティングを実施し、当日の各業種の作業エリアを確認した。各階をA〜Dの4ゾーンに分け、同一ゾーンでの複数業種の同時作業を原則禁止とした。また、翌日の作業予定を前日夕方に確定させ、資材搬入のタイミングを調整した。
得られた結果
輻輳工事期間中も手待ち時間を最小化し、内装仕上げ工事を予定工期内に完了することができた。工程遅延は発生せず、竣工引き渡しも予定通り行うことができた。
安全管理の例文
例文1:高所作業における安全管理
課題の背景
S造12階建て事務所ビルの新築工事において、鉄骨建方作業を行う計画であった。最大作業高さ45mでの高所作業となるため、墜落・転落災害の防止を課題とした。
検討内容
高所作業の安全確保のため、以下の3点について検討した。
- 墜落防止設備の設置計画
- 作業員の安全教育
- 強風時の作業基準
実施した対策
鉄骨建方に先行して親綱を設置し、作業員全員にフルハーネス型墜落制止用器具を使用させた。建方開始前に全作業員を対象とした安全教育を実施し、墜落災害の事例とフルハーネスの正しい使用方法を周知した。風速10m/s以上の場合は建方作業を中止する基準を設け、毎時の風速計測を行った。
得られた結果
鉄骨建方作業期間中、墜落・転落災害は発生せず、無災害で工事を完了することができた。強風による作業中止は延べ8日発生したが、安全最優先の判断により作業員の信頼を得ることができた。
例文2:第三者への安全管理
課題の背景
RC造地下1階・地上6階建て複合商業施設の新築工事において、歩行者や車両の往来が多い繁華街に面した敷地での施工であった。第三者災害の防止を課題とした。
検討内容
第三者への安全確保のため、以下の3点について検討した。
- 工事区域と公共空間の明確な分離
- 飛来・落下物対策
- 工事車両の入退場管理
実施した対策
敷地境界には高さ3mの仮囲いを設置し、歩行者通路には防護屋根を設けた。外部足場には防音パネルと養生ネットを二重に設置し、飛来・落下物を防止した。工事車両の入退場時には交通誘導員2名を配置し、歩行者の安全を確保した。また、毎日の作業終了時には敷地周辺の清掃を行い、近隣住民への配慮を徹底した。
得られた結果
工事期間中、第三者に対する事故は発生せず、近隣住民からの苦情も最小限に抑えることができた。工事完了時には近隣自治会から感謝状をいただいた。
よくある失敗事例と対策
失敗事例1:テーマから逸脱した記述
失敗例
品質管理がテーマなのに「足場の設置方法を工夫して作業効率を上げた」と記述している。
対策
記述を始める前に、テーマに沿った内容かどうかを確認しましょう。「品質管理」であれば、材料の品質、施工精度、検査方法などに焦点を当てます。
失敗事例2:抽象的すぎる表現
失敗例
「品質管理を徹底し、良好な仕上がりを実現した」
対策
具体的に「何を」「どのように」「どの程度」行ったかを数値とともに記述します。「コンクリートの打設温度を35℃以下に管理した」のように具体化しましょう。
失敗事例3:工事概要との不整合
失敗例
提示された工事がRC造なのに、鉄骨造の施工方法を記述している。
対策
解答を書き始める前に、工事概要の構造種別、規模、用途を再確認しましょう。
失敗事例4:因果関係の不明確さ
失敗例
「散水養生を行った。ひび割れを防止した。」
対策
「〜のため、〜を行い、〜を防止した」という流れで記述します。「夏季のコンクリート打設で急激な乾燥が予想されたため、散水養生を7日間継続して行い、乾燥ひび割れを防止した」
FAQ|1級建築施工管理技士 経験記述について
Q1:新形式になって難しくなりましたか?
A:丸暗記が通用しなくなったという点では難しくなりました。しかし、施工管理の知識がしっかりあれば、どんな工事概要が提示されても対応できます。むしろ「自分の経験が少なくても知識で勝負できる」という点では、チャンスが広がったとも言えます。
Q2:どのテーマが出題されやすいですか?
A:「品質管理」「工程管理」「安全管理」の3テーマがローテーションで出題される傾向があります。すべてのテーマに対応できるよう、各テーマ2〜3パターンの記述案を準備しておくことをおすすめします。
Q3:文字数の目安はどのくらいですか?
A:解答欄の7〜8割程度を埋めることを目安にしましょう。空白が多いと「内容不足」と判断される可能性があります。ただし、同じ内容の繰り返しで埋めるのは逆効果です。
Q4:経験記述の配点はどのくらいですか?
A:公式には発表されていませんが、第二次検定全体の**約40%**を占めると言われています。つまり、経験記述で大きく失点すると、他の問題で挽回することが難しくなります。
Q5:手書きの練習は必要ですか?
A:必須です。試験は手書きで解答するため、パソコンで文章を作成できても、時間内に手書きで書ききれなければ意味がありません。本番を想定して、時間を計りながら手書きで練習しましょう。
あわせて読みたい
1級建築施工管理技士の第二次検定対策に、以下の記事も参考になります。
- 1級建築施工管理技士 第二次検定の対策と攻略法 - 記述式問題全体の対策ができます
- 1級建築施工管理技士の難易度と合格率 - 合格率データから学習計画を立てられます
- 1級建築施工管理技士 過去問の効果的な使い方 - 出題傾向の分析に役立ちます
まとめ
令和8年度の1級建築施工管理技士 第二次検定でも、知識の応用力が問われる新形式が継続されると予想されます。
合格のための重要ポイント
- 新形式を理解する:提示された工事概要に基づいて記述する
- テーマとの一貫性:品質管理・工程管理・安全管理の違いを明確に
- 具体的な数値:温度、日数、寸法などを盛り込む
- 因果関係:「〜のため、〜を行い、〜を確保した」の流れ
- 手書き練習:時間を計って何度も書く
準備すべき記述案の数
- 品質管理:2〜3パターン
- 工程管理:2〜3パターン
- 安全管理:2〜3パターン
- 合計:6〜9パターン
新形式は「丸暗記が通用しない代わりに、正しい知識があれば誰でも合格できる」試験です。
令和8年度の合格を目指して、一緒に頑張りましょう!
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監修・執筆
sekocan 編集部
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